Special Interview 小林よしひささん

小林よしひささん
ゲスト小林よしひささん(通称よしお兄さん)
日本体育大学体育学部社会体育学科を卒業。
2005年4月~2019年まで、NHK『おかあさんといっしょ』の体操のお兄さんを歴代最長となる14年間にわたって務める。ワールドジムナストラーダ(世界体操祭)日本代表。
YouTube Channel よしお兄さんとあそぼう!

保育の仕事を応援するイベント『保育のおしごと応援フェスタ2020 in TOKYO』。
2月2日(日)に実施されるイベントに先立ち、TV番組でお馴染みの小林よしひささんにインタビューを実施!

よしお兄さんに学ぼう!
子供の心の掴み方!

はじめまして。小林よしひさと申します。

僕は、NHK体操のお兄さんとして歴代最長の14年間という本当に長く貴重な期間を務めさせていただきました。年月でみると非常に長い期間のように思えますが、他の人が思うほど14年間を長い時間と感じてはいないです。体操のお兄さんの役が決まったその瞬間から、「体操のお兄さん」はどのような姿であるべきなのかと悩み始めました。
そして、試行錯誤を繰り返しながらも1年1年を大切に過ごし、自分自身も成長することができた期間だったと考えています。

体操のお兄さんとして

実際に体操のお兄さんとしての番組収録が始まった初めのうちは、まだ僕が出演している番組の放送もされていないので、子供も保護者の方も僕が誰だか分からず、単なる知らないお兄さんという感じでした。 また、僕自身もとても緊張していました。とはいえ、番組として、子供にわずかな時間で新しい体操を覚えてもらい、動いてもらわなければならないという使命があり、本当にできるのかどうかという緊張感の中で、毎回収録に挑んでいましたね。

番組に出演する前から子供との関わりはありましたが、子供が中心というわけではなかったです。高齢者向けの転倒骨折予防の教室だったり、子供の体操教室だったりと、本当に幅広く活動していました。体操のお兄さんという役回りを与えられるまでは、老若男女問わず体操を教えることに取り組んでいました。それが、3~4歳児に特化して接することになった時、最初はもちろん戸惑うところはありました。

それでも自分の中では、「体操の指導者」と「体操のお兄さん」は別のものと考えていて、バク転を教えますとか、逆立ちを教えますとかっていう指導者という感覚ではなく、近所のお兄さんというか、外に出て遊ぼうかなと思ったら一緒に遊んでくれるような身近な存在で、素の自分でナチュラルに子供たちと接し、一緒に今日用意されたプログラムを遊びましょうという雰囲気を心掛けました。

子供と関わる上で大切なこと

子供と関わる上で思うことは、3~4歳児にもなると既にしっかりと性格が形成されており、1人の大人として扱えるくらいみんな自我が芽生えていますので、子供ではなく、人と人として対等に付き合うことが必要になってくるということです。

また、子供たちとの関わりという点でいうと、テレビのプログラムでもあるので、楽しくその場を過ごしてもらわなくてはならないということが挙げられます。やはり親から離れられなかったり、新しい環境で泣いてしまったりする子はいます。そういう子供たちとも一期一会の時間になるので、打ち解けたいという気持ちが大きくなります。体操のお兄さんの使命として、来てくれたみんなが笑顔で帰るにはどうしたらよいか最初はすごく悩みました。

泣いている子供が居てもどうして良いのかわからず、困ったりもしましたが、そのうち別のアプローチの仕方もあるのだということに気づきました。それは保育の現場でも共通して言えることだと思っているので、『保育のおしごと応援フェスタ』イベント当日に、是非とも皆さんにお伝えしたいですね。

小林よしひささんインタビュー風景

子供とたくさん関わるようになり、それまでは、自分は大人で相手は子供という感覚で接していたところが、対子供ではなくて1人の人として接しなくてはいけないという事を深く感じるようになりました。

3歳になりたての子供と、もうすぐ4歳の子供でも、12カ月しか変わらないのに、ベースとなる感覚や感性が大きく異なってくるのです。運動能力の発達はいうまでもなく、自我や個性に関する発達の違いが著しく感じ取れますね。3歳の子供は何も怖がらずに来てくれるのに、4歳に近くなると、どこか人見知りというか、恥ずかしさというか、ちょっと引いた接し方になる場合も多いのです。

お兄さんのことを好きって言っていたのに、近づくと隠れてしまうとか、年齢による感覚の差は大きく感じますね。

「現場ではハプニングはありますか」と質問されることがよくありますが、ハプニングしかないという方が妥当かもしれません。何か起きるのが当たり前なのです。大人が、走り回ってはいけないというルールを作ることがありますが、安全であれば走ってもいいと僕は思います。心を広く持ち、余裕をもって子供たちを見ることが出来ると、子供の行動パターンや動向なども、自然と感じ取れるようになると思います。

ただ、同じ子供との関わりでも、TVの現場と保育の現場では大きな違いがあるのです。日々子供と接している保育士さんと異なり、僕たち体操のお兄さんやお姉さんというのは、限られた時間しか子供と接することができません。わずかな時間で子供の性格を見て、判断をしなくてはなりません。子供同士の喧嘩が起きた時も、怒らずにしっかりと目をみて伝えるべきことは伝えますが、1日の僅か数十分のうちに伝えきらなければいけないのが難しいところですね。子供と接した先の責任を持てないことが14年間ずっと悩むところでもありました。お兄さんである自分が言ったことで、収録の時間全体がつまらなくなってしまったり、何でなんだろうと解って貰えきれなかった場合、その先のフォローが出来ない事がもどかしく感じることがありました。保育士さんは継続的に子供との関わりを持てるので、その部分は羨ましく感じたりすることもありましたね。

体操のお兄さんという立場上、保育士さんと接する機会も多くありました。また、体操のお兄さん時代から保育に関する勉強会には積極的に参加していて、保育士さんや、小学校の先生などといった、教育に関わる方の話を聞く機会を多く持つように心掛けていました。

体育を通しての保育指導

僕は体育の勉強を主にしてきた人間なので、他の保育に携わっている方のお話を聞くと、専門的な知識や経験というものが非常に重要であり、ただ子供の面倒を見ているだけではない、大変な職業であると尊敬の念を抱きます。

保育の現場に体育の指導に伺わせて頂く事も多くありますが、僕が教えることが出来るのは、体育としての運動という事だけです。保育指導という思考が運動を教えるバックグラウンドにしっかりと存在し、その中で、運動という行為をどう伝えていくべきかを考えることが出来れば、単に整列して、前転をさせて、ということではなく、より充実した指導を行うことができると思います。運動が子供の成長にどう直結していくのかとか、保育士さんが考える子供の人格形成という中に、体育をどう組み込んでいくかというような奥の深い教え方が出来たらいいなと思います。

一児の新米パパとして考えること

一児の新米パパとしても、保育士さんは子供の成長の過程において、親から離れて最初に接する存在であり、親とは別の視点からしっかりと物事を教えてくれるすごく重要な存在だと思います。また、子供から、「今日保育園でこんなことがあったよ」と話を聞く日がきたら、保育士さんが子供の成長や視野を広げてくれる存在だとより実感できて、本当に嬉しく感じるのではないかと思います。

また、保育士さんは、単に子供を見てもらうというだけでなく、一緒に色々な経験を積み重ねてくれる存在だと思います。保育園という場所も、子供を預けるだけではなく、ともに育てていく場所だと思います。それだけ保育園に対する期待度や信頼度は大きくなります。

また、一番重要なのは、親が子供をどう導いていくのかということであり、あまりに子育てを保育士さんに任せてしまうと、親と保育園の関係性も上手くいかなくなるのではないかと思います。

預ける側の親も、保育園は子供を育ててもらうのではなくて、子供の成長の一助となる環境であることをきちんと認識することが、非常に重要だと思います。

特に保育園で過ごす期間は、子供の一生にとって特に成長が著しく、人格形成にも重要な期間だと思うのです。そこには保育園なりの社会があり、さまざまな背景のもとに育っている子供がいます。保育園と保育士さん、そして子供自身によって作り出される環境なのですけれど、親たちもその環境を理解して踏み込んでいくことが必要なのです。

保育のおしごと応援フェスタに向けて

今回、『保育のおしごと応援フェスタ』に参加できることになって、素直に嬉しかったですね。こうして声をかけて頂けるのは、自分が14年間やってきたことが少し認めて頂けているのかなという嬉しさもあります。

また、実際にタレントとして活動している中で、保育士さんであったり、教育に関わる人たちのサポートになれることをしていきたいと思っていたので、きっかけにもなりますし、実際に14年間頑張ってきたことであったり、得たことであったり、体操のお兄さんであったからこそ経験できたことも沢山あるので、そこを皆さんに伝えられる機会になればと思います。

『子供の心の掴み方』というタイトルに設定をさせて頂きましたが、実は心を掴むのって物凄く難しい事なのです。それが解れば、催眠術のように皆にかけたいのですが、そんな簡単にはいきません。

もし自分がいま指導者として子供と向き合うとしたら、子供と同じ目線で物事を伝えていきたいと思います。

もちろん一概には言えないですが、指導者の方は多くの場合、子供の前に立ってしまいがちだと思います。「心を掴む」というよりは、子供たちと共に自分が一緒に楽しむことで、子供たちの方からこちらに寄ってきてくれ、心が繋がっていくことを目指すのがよいのではないかと思います。

『保育のおしごと応援フェスタ2020 in Tokyo』のステージでは、体操のお兄さんから見た保育の現場に関しても話をしたいと考えています。

是非、ステージを観に来てくださいね!!