Special Interview 菊地政隆

菊地政隆
ゲスト菊地政隆さん(通称まあせんせい)
まあせんせいの愛称で親しまれカリスマ保育士としてTBS「情熱大陸」に出演し都内の保育園で保育士、園長を19年経験。
現在は埼玉県の認定こども園の理事長としてメディア出演や全国での講演会などで活躍している。

保育の仕事を応援するイベント『保育のおしごと応援フェスタ2020 in TOKYO』。
2月2日(日)に実施されるイベントに先立ち、保育の世界では知らない人はいない、静岡第一テレビ歌のお兄さん「まあせんせい」こと菊地政隆さんに、保育や今回のイベントの魅力について語っていただきました!

自分を活かせる保育の魅力

今年で6年目となる「保育のおしごと応援フェスタ」、6年連続で出演させて頂けている事、大変嬉しく感じています。この6年間を振り返ってみると、やはり保育を取り巻く環境が変化してきていることを実感します。なんといっても、キャリアアップ制度の導入による保育士への処遇改善が一番に挙げられます。労働環境の改善によって、保育士のモチベーションが変化したことは間違いないですね。

また、保育士の国家試験が年に2回行われるようになったことも、保育士有資格者増加に繋がっていると思います。昔から保育士の仕事って、教えてもらうというよりも、実際に保育士として現場に携わる様になってから先輩の動きを見て、空気を読んで学ぶといった職人芸的な雰囲気が強かったのです。それが、国家資格として、事前に学ぶことが出来、現場の先生たちがどのような形で仕事をしていくのか、‘見える化’されたことも、安心して保育士になることが出来るようになった要因として挙げられると思います。

ずっと変わらないこと

逆に変わっていないこと、すなわち不変的なことは、子供とのコミュニケーションや関わりの中で、いかに自ら動いて考えられるかという事ですね。保育士は、保育士自身が日々成長できる仕事であって、子供からの学びの中で成長出来る仕事なのです。子供の言葉一つとってみても、それに対して先生が気付いてあげて、次こういう言葉がけをしてみようかなって子供との関わりから自分自身が変わらなくてはいけないのです。

最初から完璧な先生なんていなくて、先生って年数を追うごとに成長していく。子どもとの関わり方やまとめ方は、経験を積み重ねるたびに力がついてくるものだと思います。保育士にとって、最も本質的で肝心なところは、子供に寄り添うことが出来るか否かという点なのです。

単に子供が好きという人は、長くても5~6年しか保育士として持たない人が多いです。自分の子供が産まれると、やはり自分の子供が中心となってしまったりして。一方で本当に保育の仕事が好きっていう人は、結婚して自分の子供が産まれた後も直ぐに復職する方が多いですね。子育てとは異なる、子供の人格形成に携わる仕事の魅力に気付けるか否かが大きな違いです。

育児と保育の違い

育児と保育は混同されがちですが、実は全く別物なのです。保育士という職業も育児と同様の内容を行うのですが、保育はプロがお金を頂いて行う行為であり、そのプロセスがプロフェッショナルな内容なのです。そこに存在する大きな違いは何かというと、国家資格の有無という点なのです。一冊の本を読む時も同じで、家庭で読み聞かせるのと、保育園で読み聞かせるのは目的が全く異なるのです。やはり、自分の子供に読み聞かせるのと、仕事としてお預かりしているお子様に対して話すのでは、話し方も身振り手振りも異なってくるものです。

育児のテクニックは子育ての中で身についていくものですが、保育のテクニックは、経験を積んで自ら学んでいかないと養われないものなのです。そこに、育児と保育の違いっていうものが生まれてくるのですね。

チームワークとコミュニケーション

保育士という職業に対するイメージとして挙げられるのが、体力が必要、イベントごとが多い、常に新しいことを考えるのが大変そうと、ネガティブな要素が多い様に感じられます。実際に決して楽な仕事ではありませんが、僕は周りの保育士さんに、長くこの仕事に携わるためには自分自身の行動一つ一つに目的をもって取り組んでくださいと言っています。寝かしつけるときに、ただ単にトントンするのではなくて、目的意識をもって行うように言っています。5分で寝かしつけようとするのか、10分で寝かしつけようとするのかって考えることによって、トントンのスピードも変わってきたりするのです。自分の中での意識によって仕事の効率も変わってきますし、達成感も異なってくるのです。目的を設定して、そこに向かって行動を行うという事は、保育士自身を大きく成長させる重要な要素なのです。

保育に携わるにあたって、自分自身の個性を何処まで主張して良いのかは、保育園それぞれですね。個々の内面の個性を発揮するのはいいのですが、問題はチームワークがとれるか否かなのです。保育の基本は、先生方のチームワークなのです。その枠からはみ出さない程度で、自身の特徴を如何に主張できるのかが悩ましいところなのです。同時に、その個性を引き出してくれる先輩が居るか否かも関係してきますし。

菊地正隆さんインタビュー風景

保育の仕事に携わるのにあたって、‘繋がる’とか‘コミュニケーション’というワードはとても重要な意味を持ってきます。子供と、保護者と、同僚保育士と、周辺環境と、全てと繋がる事が求められます。お互いに理解しようと努力をし、共生しようとすることが重要なのです。ただ、最近の保育は、何処かその関係性が希薄になっているように感じてしまうのです。子供を預ける側も、本来その保育園の運営方針などに賛同したうえで、入園する園を決めるべきところなのを、待機児童問題という事も加わり、入れないからどこの施設でも良いって、とにかく入園できれば良いという動きが多くなってきているように感じます。

保育園が保育の現場を見える化するという事は、どんな保育をやっているのかを見せるのと同時に、子供に興味を持ってもらうという大きな意味を含んでいます。人と人との繋がりや、保育の現場をサポートしてくれる技術をどう取り入れるかという点も、保育士に与えられた課題でもあります。どんな保育をやっているのかを見せるのと、子供に興味を持ってもらう、どのような環境で子供が育っているのかを、連絡帳では伝えきれない部分にも関心を抱いて貰う事が必要なのです。自分の子供が集団の中で育ち合う場である保育園に興味を持ってもらう、それが見えることによって保護者の不安が減りクレームも減ってくるのです。保護者がクレームを言うのって、現場が見えないからなのです。知りたいから言う。それを上手に答えられない施設、すなわち保護者とのコミュニケーションがうまくとれない保育園はクレームをいっぱい生み出してしまう事が多い様ですね。

残念なことだと思うのですが、ちょっと難しい問題でもあるので、この点は当日話をさせて貰えればと思います。

携わることで気付く保育の魅力

保育の仕事に携わり始めたからこそ気付くことが出来た保育の魅力って多いですよ。

例えば同じ絵本を読む時でも、1対1の時と、保育園で10人に読み聞かせる為の読み方と違うのです。何が違うかって言葉で説明するのは難しいですけど、あえて言うならば気構えですかね。多数に読み聞かせる為により噛み砕いた読み聞かせ方になるというか、どうしたら子供たち全員の前に立ってこっちを向いて貰えるかって考えるようになるのです。目の前に子供が居て初めて気付くのです。いわゆるコミュニケーションですね。ただ、保育士を目指す人全員が必ずしもコミュニケーション能力が高いわけではないのです。この能力も、保育の現場に携わっているうちに次第に養われていくものなのです。

例えば、僕が講師として教えに行っている専門学校では、毎回授業の始めに13分間の日本昔話を見せています。そして、そのストーリーを、連絡帳の半分にあらすじを全部まとめる作業をさせています。それを続けると、物凄く連絡帳を書くのがうまくなるのです。目の前の子供たちの様子をメモに取って様子を書ける、コミュニケーション能力の高い即戦力になる人を育てているのです。

運営方法も保育士の役割も変わってきた

行事の情報収集方法や運営方法も大きく変わってきました。昔は行事で実施する内容などの情報が簡単には入ってこない為、自ら情報を求めに様々な行動を行っていました。例えばオペレッタ、発表会で行う劇の情報を、夏の合同研修会とかに参加して情報を持ち帰る先生も多かったです。でも今は、ネットとかの普及によって簡単に家に居ながらにして情報を得ることが出来るので、様々な作品に触れられるという点では非常に恵まれた環境になりつつあると言えます。少し前の作品もYouTubeなどで見ることが出来るので、僕の昔の作品とかも今でも演じてもらっていたりしますし。ただ、外に出向かなくても良い分、他の保育園との交流方法も変わってきています。良い悪いは別として、他園の先生との繋がりが、昔に比べると希薄になってきている感じは否めないですね。

僕が保育業界に足を踏み入れた頃は、保育士の役割は保育という技術だけが出来ればよかったのです。でも、最近の保育士には、子供の面倒を見ることはもとより、マネジメント力、例えばクラスの運営であり勤務シフトの調整などの業務もこなすことが求められています。また同時に、保育士の役割は子供だけを見るのではなくて保護者の支援をすることが求められる時代になってきています。子供の日々の様子を伝えるだけではなく、お母さんの支援もできる保育士とか、言葉がけのコミュニケーションが上手でお母さんの言葉を引き出して支えるとか。強いて言えば地域に向かってマネジメントが出来る。これがまさに繋がるだと思うのです。

慣らし保育という期間が入園する際に有るのですけど、一般的には子供が保育園に慣れるための期間と言われています。しかし、僕はその期間って、先生がお子さんたちを安心して預かるために必要な時間だと思っているのです。僕の保育園にお子様を預ける場合、慣らし保育の1週間を必ず欲しいと保護者に伝えるのは、とにかく安心して預かりたいからなのです。万が一何かあったときに責任を取るのは保育士なのです。その万が一を無くすために1週間という時間の中で、お子さん達にちゃんと向き合う基盤を作りたいのです。子供たちが帰った後の時間も、保育士同士で園児たちの情報を共有しているのです。ご飯をどれだけ食べたとかに始まって、この子はこういう行動を起こしたがどう対応したら良いのかなど、細かなことまで把握をしようと努力しているのです。表からは見えない、保育士同士のそういうコミュニケーションがあってこそ、子供を安全に安心して預かる環境を創り出せるのです。

昔は子供だけでよかったのが、現代の保育士には、保護者や地域、そして環境や自然と繋がることが求められているのです。保育の仕事も時代の流れと共に多様化しています。だからと言って保育という職種が難しくなってきている訳ではなく、多様化している分、楽しみも増えてきて、保育者としてのやりがいという点も増えてきていると思います。

個人を活かしてくれる環境が重要視される

保育って、個人プレーではなくチームプレーなのです。団体戦の中で、いかに自分の個性を発揮出来るかというところが重要な点なのです。個人を活かしてくれる環境が整っているか否かが、転職に繋がったりするのです。最近の保育の就職説明会などに足を運んでみると、以前と比べて保育の労働条件とかをあまり主張しなくなってきていますよね。逆に園独自の運営方針などを主張するようになってきています。現場の写真とかを見せて、実際の保育内容を全面に訴えかけてくる施設が多くなってきていますね。そうすると、そこに魅力を感じて就業する先生も多くなるわけで、保育園の方針に賛同して入ってくるので離職率も低くなるのです。採用しても一年とかでやめてしまう先生が多いと、ミスマッチになってお互いに苦痛になってしまいますから。

3年でわかる保育の魅力・楽しさ

僕は保育士の世界に飛び込もうとしている人たちに、保育は3年目までは修行だといつも言っています。

1年目は何もわからない。何がわからないかって、1年の流れがわからないし、明日何が起きるのかがわからない。来月何が行われるのかがわからない。どんな行事が行われて、どんなことが起きて、先輩の先生たちがどう動いていくのかが解らないのです。先輩の指示が無いと動けないのです。でも2年目になると、来月何が行われるのかを先読みすることが出来るようになり、自分でちょっと動けるようになるのです。でも残念なことに、一年間しか子供と接していないので、自身が保育士として子供の発達にどう向き合えばよいのか、子供の動きが未だ読めないのです。3年目になってようやく園の一年間の流れが解るようになり、保育の魅力に気付けるようになるのです。いろいろと行事を任せられるようにもなりますし。そうなると、保育が楽しくなるのです。だから、みんなには「3年間は同じ園で勤めないともったいないよ。」と伝えています。転職するとせっかく覚えかけた園の独特な流れとかが振り出しに戻ってしまいますから。だから、3年勤めてみてから考えた方がいいですよって言っています。

3年勤めると、保育の魅力が解り、子供が好きって感覚から保育って楽しいって感覚を、ようやく感じられるようになると思うからです。今回、この「保育のおしごと応援フェスタ」当日のパネルディスカッションの際にも、パネラーとして登壇する現役保育士さんに1年目の保育と3年目の保育で、保育士としての感覚がどう変わってきたかとかも聞きたいと考えています。

ご参加、お待ちしております

自分を活かしながら保育と繋がるには、やはり様々な保育現場に実際に接してみて、その中から自分に会う場所を見つけるってことが非常に重要だと思います。

菊地正隆さんインタビュー風景

まずは、この東京都が主催する『保育のおしごと応援フェスタ 2020 in TOKYO』に来てみてください! いろいろな保育園の話をたくさん聞いてみてください!

そこから、自分を活かせる保育のお仕事を見つけてみてはいかがでしょうか。皆さんのご参加、お待ちしております!!!